【介護施設の探し方】65歳以上の認知症の人のための専門施設「グループホーム」。メリットとデメリット

グループホームのイメージ

1:【介護施設の探し方】65歳以上の認知症の人のための専門施設「グループホーム」メリットとデメリット

グループホームとは、簡単にいうと認知症の人だけが入居できる認知症専門施設です。

介護保険上の名前は「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれていますが、現場で働いている人はみんな「グループホーム」と呼んでいますので、特に正式な名前は覚えなくても良いと思います。

時々略して「GH」と呼ばれることもあるので、こちらの方は知っておいても良いでしょう。

私も会社の命令でグループホームで働いたことがあります。

実は個人的には1番好きな施設です💖

理由は、アットホームでゆっくりと時間が流れているから。

でも、これは私が働いていたところのお話なので、他の施設は違うかもしれません。

それでもグループホームには「1ユニットの定員が最大9名まで。1施設で最大2ユニットまで」という条件があります。

つまり、一般の老人ホーム(特養や老健、有料老人ホームの定員がだいたい50名程度〜100名程度)に比べると目も気も届きやすいといったメリットがあります。

今日はそんなグループホームについてご紹介します。

2:グループホームの特徴とメリット

2−1:アットホームな雰囲気

前述した「認知症専門」「定員が9名まで」といった特徴のほかにもグループホームには様々な特徴があります。

まずは、認知症高齢者に配慮した施設づくり。

民家を改装した施設から、新たにグループホームとして建築された施設まで様々な施設があります。

他の老人ホームに比べて雰囲気はとてもアットホームなのが特徴です。

運営会社や施設の方針によっても異なりますが、概して家に近い施設と言えると思います。

そのため、介護スタッフの中には「小規模で理想的な介護が実践しやすいグループホームで働きたい」という人が結構います。

私も個人的にはグループホームが大好きです。

「グループホームが小規模である」という話をもう少しすると、人員配置的にもメリットが大きいです。

たとえば人員配置が3:1(入居者3人に対して職員1人)の場合、グループホームでは入居者数は最大9人なので、職員数は3人ということになります。

(補足:職員には早番、遅番、日勤、夜勤などのシフトのほかに公休や有給休暇があり、勤務形態も常勤、非常勤とあるので施設が採用している職員数が3人ということではありません

それでもほか一般的な老人ホームに比べると採用されている職員数が少ないので、認知症の人が安心して人間関係を築きやすくなっています。

たとえば同じ3:1の人員配置でも、90名の入居者さんに対して30名の職員がいる施設だと、それだけで職員の顔と名前を覚えられない気がします。

つまり認知症の人にとって「小規模」というのは、入居者同士や職員とも安心して人間関係を作りやすく安心して生活するための大切な条件の一つです。

ただし小規模であるために、夜間の人員配置が1人しかいないなどのデメリットもあります。ここは後で詳しく書いています。

2−2:認知症に特化したサービスが受けられる

認知症専門施設なので当たり前のことですが、入居している人は全員認知症の方たちです。

当然、提供される介護サービスは認知症に特化したものが多く含まれます。

回想法や会話を中心としたレクリエーション。

認知症に詳しいスタッフも多いためユマニチュードというケア方法を実践している施設も多々あると思います。

回想法とは入居者さんが若かった頃の話題を中心として、記憶障がいがあっても楽しく話ができるように工夫されたお話し会のこと。

入居者さんが楽しく自分のことや昔のことを話してくれるのが特徴です。

認知症の人は記憶障がいはありますが、昔のことはよく覚えておられます。

そして会話している瞬間は本音で話をされています。

会話が進むと、さっき話したことを忘れてしまうことも多々ありますが、例え同じ話でも楽しい雰囲気が作れるのが回想法の特徴です。

ユマニチュードとは、簡単にいうと「人間らしくある」ということを中心としたケアの手法です。

実は認知症の専門職員だけでなくご家族でも実践できるケアの手法です。

しかしグループホーム以外の施設では、職員も含めてまだまだ浸透が不十分な印象です。

ユマニチュードについては別の機会にお話しするとして、良識のあるグループホームでは中心となる「哲学」です。

ただ、グループホームの中でも職員の教育体制を含め、ケアのレベルには差があります。入居を考えている場合はホーム長やケアマネジャーの話を聞いたり、体験入居をするなどして慎重に見極めるのが良いでしょう。

2−3:要支援2〜要介護5までの幅広い人が利用できる

グループホームは、要介護認定が「要支援2」の人から「要介護5」までの人が利用できます。

65歳以上で要介護認定を受けていて、認知症の診断を受けている方であればほとんどの人が利用可能です。

しかし裏を返すと「要支援1の人」と「要介護認定の申請をしていない人」、「要介護認定の申請をしたけれど自立判定や非該当の判定となった人」は利用できないので注意が必要です。

2−4:住み慣れた地域で暮らせる

グループホームはどこも地域密着型です。

介護保険の給付としても、グループホームは地域密着型に分類されます。

地域密着型なので、認知症になっても住み慣れた地域で生活をすることができます。

グループホームでは、家族や職員の付き添いがあれば「外出OK」としているところがたくさんあります。

歳を取った人にとって生活する環境が変わることは大きなストレスとなりますが、その点でも、若かった頃のキラキラした思い出がたくさんある地域で住み続けられるグループホームのメリットは大きいです。

ただし、一つだけ注意点があります。

原則、自分が住んでいる(住民票がある)市区町村のグループホームにのみ入居できるので、市区町村の境目に住んでいる人は隣の市区町村のグループホームが利用できないことは頭の片隅に覚えておいてください。

3:グループホームのデメリットについて

3−1:なかなか入居できない

まず最初のデメリットはコレ!

定員数が少ないため(1ユニット最大9名)、なかなか入居ができません。

新しく開設されるグループホームのチラシが新聞広告に入っただけで、問い合わせが殺到するケースもありました。

ちなみに私が働いていた有料老人ホームから、「待ってました!」とばかりに新設のグループホームに転居された方は数知れず。

決してうちの施設のサービスが悪かったわけではないと思いますが、「この入居者さんは、本当はグループホームのほうが合っているよな、、」と思っている人ばかりだったので、その人たちのことを考えると良い判断だっと思っています。

3−2:看護師がいない場合がある

グループホームには看護師の配置基準がありません。

そのため看護師がいない場合があります。

看護師がいないと、胃ろうの管理をしたり、インスリン注射を本人に代わって打つことはできません。

これらの医療行為は介護職員ではできないことになっています。

平成17年に介護職員が行える医療行為の解釈について厚生労働省から各都道府県に通知があり、条件付きで介護職員でも喀痰吸引などを行うことができるようになりました。

厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」はこちら

しかし基本的には医療行為は介護職員が行うことはできないので、医療行為ができる看護師がいない場合はデメリットとなります。

細かなことは気にしなくてもよいと思いますが、大まかに「家でできない医療行為はグループホームでもできない」と覚えておくと良いと思います。

3−3:夜間など緊急時の対応に差がある

グループホームは少規模ゆえに、夜間の職員がユニットに1人というところがほとんどだと思います。

お年寄りは昼夜問わず、体調を崩すことが多く、夜間の救急搬送はよくあることです。

そして施設で救急車を呼んだ場合、救急要請した経緯についてよく分かっている人が救急車に同乗して病院までついていくのが大原則です。

救急車を呼んだ時は普段の様子がわかる「介護記録」や「お薬手帳」、「ケアプラン」や「医師の往診記録」「医療保険証のコピー」などをまとめたファイルを持参します。

通常は搬送前に救急要請したことをご家族に連絡しますが、時間がない場合は救急車の中から家族に連絡をすることもあります。

そして病院でご家族の到着を待ち、救急搬送した経緯を説明するというのが一連の流れです。

しかし「夜間に1人しか職員がいない」ということは、「しっかりとしたバックアップ体制がないと救急車に同乗することができない」ということです。

1人しかいない職員が救急車に同乗してしまうと、施設職員が施設に誰もいなくなるからです。

救急隊も病院の医師も「初めて会う状況がわからない救急患者」というのは対応に非常に困ってしまう上に、適切な処置や対応が遅れてしまいます。

またワンオペの場合、夜間の地震や火災などの際に十分な対応ができるのかどうかも不安が残るところです。

3−4:認知症の診断書がないと入居できない

入居するには医師による「認知症の診断書」が必要です。

家族が勝手に「あれ?うちのおじいちゃん、認知症かな?」と思っても、それだけでは入居できません。

診断書を取るとなると、本人を病院に連れていき「認知症」と診断してもらうことが必要です。

人によりますが、本人が通院を嫌がったりして、これが結構大変だったりします。

4:グループホームの費用について

必要な費用は「家賃」「食費」「水道光熱費」「介護保険の自己負担分」が一般的ですが、中には「管理費」が必要なところもあります。

その他「理美容代」「オムツ代」「レクリエーション費用」「訪問診療費」「薬剤費」なども必要です。

もし通院する時に職員に同行をお願いする場合は、別途「付き添い費」などが発生する場合もあります。

そして入居一時金や保証金ですが、0円〜1000万円以上と幅がある上に、退去する時に「返ってくるお金」と「返ってこないお金」があるので事前に必ず確認しましょう。

5:最後に。必ず本人の気持ちを確認して!

グループホームは、認知症の人が入居するには本当に良い施設だと思います。

しかし集団生活が苦手な人などは、住み慣れた自宅で訪問介護や訪問看護を利用しながら生活するほうが良いことも多々あります。

グループホームといっても「施設」です。

ご家族としては専門のスタッフがいるところで生活してくれるほうが安心かもしれませんが、住んで生活をするのは本人。

施設での生活を嫌がるかたは相当数いらっしゃいます。

ケアマネジャーの立場から言わせていただけるなら、必ず本人の気持ちを確認するようにしていただきたいと思います。

「いやいや、認知症なんだから気持ちを確認することなんて難しいでしょう?」と思われるかもしれません。

しかし本人と一緒に見学に行く前にグループホームの話をしたときの発言内容や表情から気持ちを推し量れるかもしれません。

認知症は「記憶障がい」や「判断力の低下」はありますが、感情は残っています。

嬉しそうなのか、そうでないのかの判断はつくことが多いです。

1番やってはいけないことは、本人に相談せずに本人が生活する場所をご家族が勝手に決めてしまうことです。

いろいろな事情があることは百も承知ですが、介護は常に本人が中心にいますので、いくら良い施設が見つかったとしても、そのことだけは忘れないでいただきたいと思います。