もくじ🔖
1:【看取り】ターミナルケアでも大切な人が息を引き取る瞬間に立ち会うのは難しい。だから、、
終末期においてドラマでよく見るような天国へ旅立つ人を家族が囲んで見送るシーン。
現実には非常に少ないです。
終末期とは現在の医療では治療が望めない疾患や老衰などに対して予測される死への対応が必要となってくる時期のことを言います。
私は17年間、老人ホームで働き数百名のお年寄りの旅立ちを見届けてきましたが、ドラマのような看取りのシーンはほとんど見たことがありません。
なぜなのでしょうか?
もちろん、医療機関で働く人や在宅で働いている人であれば見てきた状況は違うと思います。
今回はあくまでも私が働いていた老人ホームでの話ですが、「なかなか親が息を引き取る瞬間に立ち会うのは難しい」というのが私の実感です。
私も実の親の旅立ちの瞬間に立ち会うことはできませんでした。
でも後悔はしていません。
今日は、ドラマのような旅立ちのシーンを想像している方に、私が経験した看取りの現実と後悔しない心の持ち方についてお話しようと思います。
2:親が息を引き取る瞬間に立ち会える率は10%未満
結論から言うと、家族がお年寄りを囲んで息を引き取る瞬間を見届けることができる確率は10%未満でした(ハピもも調べ)。
つまり10人いたら1人いるかどうかです。
なぜ息を引き取る瞬間に立ち会うことが難しいのでしょうか?
実は私にもわかりません。
そして明らかに言えることは「長年看取りの現場で働いていても旅立ちの瞬間を予測することは難しい」ということです。
でも中には旅立ちの瞬間に立ち会える人もいます。
それは亡くなる数日前から施設に泊まり込んでケアしているご家族です。
しかしながら泊まり込んでいる場合でも、ご家族が寝ている間に旅立たれることが多々あるので、本当に旅立ちの瞬間を見届けるのは難しいことだと思います。
私は立場上、呼吸が止まったら駆けつけるようにしていましたが、それでもなかなか予測通りにはいきません。
旅立ちは、深夜であったり早朝であったり、日中であったり夕方であったり、、。
よく「人の生き死には潮の満ち引きが関係している」とか言われますが、個人的にはあまり実感したことはありません。
3:終末期の人の体に旅立つ数日前から起こること
3−1:食事量が少なくなる
死を迎える人の特徴の一つは食事量が減ることです。
本人の体は苦痛なく旅立つために、少しでも体を軽くしようとしているのかもしれません。
本当は体に残っているエネルギーを静かに燃やしているといったほうが良いのかも。
どちらにしても、それはまるで草木が枯れていくように、、。
この時に、ご家族によっては皮下点滴を希望する人もいます。
そのようなご家族の希望があれば医師も少量(100ml〜200ml程度)の皮下点滴をしてくれることが多いです。
しかし、点滴をしたからといって旅立ちを避けることは難しいです。
3−2:眠る時間が増える
昼夜を問わず眠る時間が増えていきます。
本人は夢の中なので、無理に起こしたりはしません。
この時期では体位交換や排泄物の処理は行いますが、食事介助も消極的な時期です。
寝ているわけですから、そもそも食事は摂れません。
3−3:死臭がする
これは病院や施設である程度の年数を働いていたら感じることがあるのではないでしょうか?
お部屋に入った時に漂う「死の匂い」。
筆舌には尽くしがたいですが、敢えて言うなら「ゴムを焦したような匂い」とか「鉄が錆びた時のような匂い」です。
入居者さんのお部屋に入った瞬間に「あれ?」と思い、ステーションなどに戻ってきて他のスタッフに確認すると「私も匂いました。いよいよですかね?」という話になって死期が近いことを悟ります。
ただし匂いがしたからといって、その日のうちに旅立つ人もいれば数日後に旅立つ人もいます。
しかしながら死臭がすると、そう長くは生きられない印象です。
3−4:脈拍が上がったり、下顎呼吸が見られる
これはバイタルサインや観察のポイントとなるところですが、脈拍が早くなることが多いようです。
私たちは「最後の命を静かに燃やしている」と捉えています。
地方によっては「たぎっている」というような表現を使うところもあるようです。
また眠りながら下顎呼吸する様子が見受けられます。
肩で息をするようなイメージですが、すでに本人は夢の中にいる状態です。
経験上、この状態の時に呼びかけてもはっきりとした返答がないことが多いです。
この下顎呼吸が見られたらご家族に至急連絡をしますが、下顎呼吸が始まると数分から数時間程度で旅立たれることが多いため、泊まり込んでいないとなかなか死に目に遭えません。
連絡から30分後に到着しても旅立たれたあとということも多々ありました。
でも私の中では、呼吸が止まった後に到着したとしても十分「セーフ」だと思います。
急いでご家族が向かってくれたにもかかわらず、到着した時にはすでに呼吸が止まって数分経過していたおじいさんがいらっしゃいました。
その時に同僚の女性看護師が死に目に立ち会えなかったご家族に対して「セーフ!セーフです!」と両手を広げて言っていた時に、私は本当にその通りだと思いました。
大切なことは「その人のことを思う気持ち」だと。
4:まとめ。本当に大切なことは感謝の気持ちを伝えていること
旅立ちの瞬間に立ち会うことは大切かもしれませんが、なかなかうまくいかないのが現状です。
でも本当に大切なことは、旅立つ人に向けてきちんと感謝の言葉が伝えられていることです。
最初はなかなか死を受けれ入れられず、そこまで気が回らないかもしれません。
もしかしたら旅立ちの直前に伝えようと思っていらっしゃるかもしれません。
でも終末期に入ったら、なるべく早い段階で感謝のことばを伝えるようにしてください。
もっというと、普段から感謝の言葉を伝えることができていたら、大切な人が旅立ったあとに後悔することはほとんどないでしょう。
医療や介護については、よく関係の医療機関や介護事業所と連携を取りながらケアするにしても、家族にしかできないもっとも大切なケアは感謝の気持ちを伝えることだと思います。
しかしながら、本人に「ありがとう」って言ったら、最後の別れの言葉のようで本人が傷つくのではないか?
あるいは身近な存在過ぎて照れ臭いのではないか?
そのような思いがあるかもしれません。
でもそんなことはありません。
きっちりと「ありがとう」と伝えることができた時に、はじめてお看取りが成立するのです。