【金銭管理】誰が高齢者のお金の管理してる?高齢者の金銭管理のアセスメント

金銭管理のイメージ

1:【金銭管理】誰が高齢者のお金の管理してる?高齢者の金銭管理のアセスメント

金銭管理のイメージ

あなたの金銭管理は誰がしていますか?

高齢者の金銭管理は誰がしていますか?

もし「自分でしている」というのであれば幸いです。

自分でしていなくても、家族の中で話し合いができていて、納得した上で「妻が管理している」「夫が管理している」のであれば幸いです。

しかし、本人が納得していない形で家族の誰かが自分の財産を管理していたら?

実は介護現場ではしばしば「誰が高齢者のお金を管理するのか?」という問題が出てきます。

「うちのお父さんは外に1人で出られないのだから、お金の管理もできないと思うよ」

「母は認知症があるから、お金の管理は難しいんじゃない?」

そのような会話がよく展開されます。

「はたして、本当に高齢者が金銭管理をすることは難しいのか?部分的にも自分で管理できることがあるのではないか?」

今日はそういった目線でお話をしようと思います。

2:高齢者の金銭管理の能力を「7つの行動」に分けて分析する

金銭管理の全体図

ケアマネジメントでは、能力の評価をするときは一連の行動を細かく分解して一つづつ評価していくのが基本です。

例えば「移動」の評価であれば、「寝返り→起き上がり→座位→立ち上がり→立位保持→歩行」といった具合に行動を細かく分けてそれぞれ評価していきます。

「食事」の評価であれば「食事の認識→口に食事を運ぶ→咀嚼する→食塊(食べ物のこと)を喉まで送る→飲み込む」と行動を分解します。

それでは、金銭管理の一連の行動ってどんなものでしょうか?

以下に「ハピもも」が考えた金銭管理に関する行動を7つに分けた図を載せておきます。

2−1:収入を管理する能力

incomeと書かれた文字

まずは「月々の収入を把握できているかどうか?」というところから評価を始めます。

認知症などで全く収入を把握できていない場合もあるでしょうし、時折、理解できないこともあるかもしれません。

大まかにでも「年金収入がいくら」「家賃収入がいくら」と理解できていればこの項目はOKです。

もし収入を把握できていなかったら、ご家族の介入が必要です。

2−2:契約に関する能力

契約に立ち会うイメージ

契約には「契約内容を理解する能力」が必要です。

文字を読んだり話を聞いて「契約内容を理解する能力」と、契約するかどうかの「判断能力」も必要です。

また「署名する能力」も必要です。

例えば麻痺など手の動作に問題がある場合でも、署名ができれば、例えどんなに崩れてしまった字でも読めればOKです。

ただ契約の相手によっては代筆を求められるかもしれません。

その場合は立ち合いと署名の代行が必要です。

さらに、契約には「契約内容の変更」や「契約の解除」といった判断も要求されます。

その判断ができない場合は、ご家族の手助けが必要です。

また認知症で契約の判断が難しい場合は、家庭裁判所に成年後見制度の申請をすることもできます。

2−3:行政手続きや納税を管理する能力

行政からの手紙のイメージ

こちらも金銭管理の中では比較的高度な能力を要求されます。

行政手続きも、契約に関するところと重複しますが「内容の理解」や「判断」の能力が問われます。

最低でも「健康保険の更新」の手続きや、年金の「現況届け」などができないと生活そのものが脅かされます。

医療保険、介護保険の手続きや年金の「現況届け」が自分でできない場合は、最優先で家族などが援助する必要があります。

場合によっては成年後見人を選任してもらったり、介護保険の要介護認定の申請の代行も必要になります。

また納税に関しても、1人でできない場合は家族が介入するか、ご家族が専門家に依頼して力を借りることも必要です。

2−4:通帳や印かん、カードを管理する能力。今の時代はIDやパスワードも

通帳や印鑑などパスワードのイメージ

代表的な例としては「認知症でそもそも通帳や印鑑、カード、保険証類に関心がない」「寝たきりで通帳類の管理が難しい」といったことがあります。

特に「通帳と印鑑」は絶対に他人の手に渡ってはいけないものです。

ここが管理できない場合はご家族が管理するか、銀行の貸金庫を利用することも検討した方が良いと思います。

しかし貸金庫の利用にあたっては審査や色々な制約がありますので、利用を検討する場合は事前に取引のある銀行などに確認してください。

2−5:現金を引き出す能力

銀行やATMのイメージ

最近では、クレジットカードや電子マネーが使えれば買い物ができるのですが、まだまだ現金を使う機会もたくさんあります。

そのため、銀行に行ったりATMを利用したりして現金を引き出せなければいけませんが、この能力も評価が必要です。

安易に現金の引き出しを他人に任せることはあってはいけません。

介護スタッフは絶対に通帳や印鑑、キャッシュカードやクレジットカードも預かってはいけません。

おそらく多くの介護サービス事業所では禁止されている行為だと思います。

もし「移動の問題」で銀行やATMまで行けなければ、「車での移送」や「車椅子を押す」など、「移動」の部分だけを援助します。

あとはご自分でやっていただくのが基本です。

しかしながら、署名が難しかったり、暗証番号を入力することが難しいのであれば、やはりご家族や成年後見人に援助してもらう必要があります。

2−6:手元にある現金を管理する能力

金庫の写真

介護現場でしばしば問題になる「物盗られ妄想」。

現金をどこかに置いて、置いた場所を忘れてしまったり、そもそも持っていない現金を「誰かに盗られた」と言う妄想です。

「物盗られ妄想」は人間関係を悪化させる原因となります。

物盗られ妄想を防ぐ工夫としては「置く位置を決める」「金庫を使用する」などの対策があります。

少額の現金をあえて見えるところに置くようにすると、安心されることもありますし、あえて金庫の中で管理し妄想発言が出たときに金庫を開けて現金を見せることで安心されることもあります。

そのほか「誰にでもおこづかいをあげてしまう」という問題を持つ人もいます。

家族以外の人にでも「おこづかい」を気前良くあげてしまうのです。

介護・看護職員は職業倫理があり、「おこづかい」を受け取っても事業所の責任者に報告し、責任者からご家族に返金することも多々あります。

お年寄りの立場に立てば「誰かに感謝の意を表したい」という気持ちもわかりますが、こういった行動が頻繁に見られた場合にはご家族と協力しながらお年寄りの資産を減らさないように注意しなければいけません。

私が担当したお年寄りの女性で、在宅生活中に布団の訪問販売の人と仲良くなり高額な布団を買ったり「おこづかい」をあげたりして娘さんが大変困っていた事例がありました。

その後施設に入居されたので、そのような心配は無くなりましたが、消費者相談センターに相談したケースとなりました。

大きなお金を手元に持っておられる場合は、十分な注意が必要です。

2−7:現金での支払いに関する能力

お金を数える写真

現金の支払いに関する能力には「お金の計算能力」と「指を問題なく動かす能力」があります。

計算能力は本人のプライドにも関わるためなかなか評価しづらいのですが、財布の中身を見てみると「小銭がいっぱい」ということがあります。

原因は支払いのときに「紙幣を使う傾向が強い」こと。

細かな計算が難しいために、「紙幣で支払っておけば安心」といった心理が影響しているのかもしれません。

またリウマチなどで指が動かしづらい時も、レジでの支払いが一苦労ということも時々あります。

タッチする電子マネーやプリペイドカードなどで支払うことで、手の巧緻性(こうちせい)の問題に対処したり、お金を入れておく財布を「お金が取り出しやすいもの」に変更するなどして対処します。

また目が見えにくい人の場合には、あらかじめ「紙幣は1000円札だけ」を財布に入れておいてあげるなどの対策もあります。

3:まとめ

高齢者の金銭管理はご家族がしていることがよくあります。

中には上に挙げた能力がまだ結構残っているのに、金銭管理の全てをご家族が行っており嘆いているお年寄りもいらっしゃいます。

金銭管理は人として大切な権利の一つであり、自己実現のための大切な行為です。

「高齢になったから」という理由で、金銭管理の権利を全て家族を含めて他人が握ってしまうことに大きな疑問があります。

まずは「正しく能力を評価し、できないところに対してだけ援助する」ということを家族や介助者が常に意識することが大切だと思います。