【認知症】認知症を疑う10のポイント。キーワードは「記憶障がい」

認知症のサイン

1:【認知症】認知症を疑う10のポイント。キーワードは「記憶障がい」

遠い目をする老婦人の写真

多くの場合は家族が親や配偶者の様子を見て「あれ?おかしいな」と感じることがほとんどだと思います。

本人はもっと前から「もしかしたら認知症かも?」と悩んでいることが多いです。

しかし本当は認知症ではない場合が含まれます。

認知症は記憶の障がいがあることが特徴です。

そういった意味では、せん妄、ビタミン欠乏症、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症だけでなく難聴とは区別されますが、これらも最初は周囲から「認知症かな?」と思われてしまいます。

認知症は高齢になると真っ先に疑われる傾向があるにもかかわらず、認知症になると人権の多くを失います。

人権が失われるということであれば、あらゆる可能性を排除した上で認知症とされるべきだと思います。

そこで今日は認知症と疑われる10のポイントをご紹介します。

しかしながら、該当していたからといってすぐに認知症というわけではないのでご注意ください。

認知症は問診だけでなく様々な検査の上で診断されるべきというのが私の主張です。

2:認知症が疑われる具体例10選

2−1:同じ話を繰り返しするようになった

メビウスの輪のイメージ

普段からおしゃべりが好きで、若い頃から何度も同じ話をする人がいますよね?

でも今回はそれとは違います。

あくまでも記憶障がいを原因とする症状で、前回同じ話をしたことを「忘れてしまっているケース」です。

同じ話を繰り返す人の場合でも、「あっ、そうか?前にも言ったか?ハハハ。笑!」という人は同じ話を色々な人に言っているので誰に喋ったかを忘れているだけです。

こういったことは誰にでもあることです。

しかし、記憶障がいを原因とする場合では「ハハハ。笑」では済まず、しつこいくらい「何度も」同じ話をします。

2、3回のレベルではありません。

10回、20回と同じ話が繰り返されます。

認知症の程度が重くなると話をした数分後にまた同じ話が始まります。

しかし本人の様子はというと、あたかも初めて話をするように話し始めます。

私が見てきたところ、本当に認知症の人は本人にとっての不安となることを何度も話す傾向があると思われます。

そしてそれは見当識障がいなどと併せて表出するケースも多いです。

見当識障がいとは、時間の認識や場所の認識に錯誤を引き起こす障がいです。

子供の顔がわからない、孫の顔がわからないなどの人間関係の理解ができなくなることもあります。

例えば、90歳のおばあちゃんが「小学校に上がる前の息子が帰ってこないのよ」と言っているケースです。

明るい話や楽しい話を、初めての話をするように何度も話すケースもありますが、それはまだ良いと思います。

暗い話や被害妄想のような話を繰り返しするようになると本人も辛いので、早めに医療機関への受診をした方が良いと思います。

2−2:外出しなくなった。家でボーッとすることが増えた

萎れた花の写真

認知症を疑うからには、こちらも「記憶障害」を起因とする場合です。

膝や腰の痛み、骨折などによる安静は対象外です。

そして薬の影響による場合も対象外です。

認知症の人が全員、家でボーッとするわけではないですが冒頭にもお話ししたように認知症で一番困っているのは本人です。

そして認知症も「抑うつ」を引き起こすことが知られています。

本人にはどうすることもできない。でも、人にも言えない。

そういう状況に気付いてあげられるのは家族や介助者だけです。

ボーッとしていたり活力の低下が見られた時も認知症を疑ってください。ただし、きちんとした診断なしに認知症だと決めつけるのは厳禁です!

2−3:服装や身だしなみが乱れてきた

裸足の写真

女性なら化粧をしなくなったり、男性なら無精髭を生やすようになったりすることも含みます。

認知症は単なる「物忘れ」だけでなく「あれ、これどうするんだったっけ?」と次にすべき行動が分からなくなることもあります。

例えばトイレに行って用を足した後、後始末の仕方が分からなくなったりします。

また違う例では服を用意されていても服を着る方法が分からなくなったりするのです。

以下、実際に経験した衣類の乱れの例を挙げます。

①汚れたままの服を着ている

②前後(まえうしろ)を逆に着ている

③靴下を片方だけ履いてもう片方の靴下を履くのを忘れている

④ボタンが互い違いになったままきちんとハメられていない

⑤暑い日に何重にも重ね着をしている

⑥上着の上にトレーナーなどを着るなど、衣類を着る順序がバラバラ

⑦そもそも服を着なかったり、靴を履かずに出かける

このような様子が見られたら注意が必要だと思います。

2−4:財布に小銭が増えた

小銭の写真

認知症の症状に「計算ができなくなる」というのがあります。

数字の認識ができなくなる場合もありますし、意欲低下によって計算が億劫になることもあります。

しかし本人はそれを隠そうとするため、周囲はなかなか気付けません。

それでも「財布に小銭が増えてきたな」と思ったら、「あれ?」と思って良いと思います。

理由は小銭で支払う能力が落ちてくるから。

私たちは通常、財布の中の小銭を減らすために計算しながら端数を小銭で支払っていることが多いです。

でもその計算ができなかったり億劫になると、どうしても毎回紙幣で払ってしまう。

その結果、小銭が増える。

最近では現金を使わずICカードで決済できたりすることも多いのですが、この兆候はわかりやすく財布に出てきます。

現金を機械でチャージをすることは認知症の人にとって難しいことが多い印象です。

電車の切符も一人では買えないことがしばしば。

支払いの手順が複雑になると対応できなかったりイヤになってしまいがちです。

逆にケアマネジャーが金銭管理の評価をするときは「計算能力」や「管理能力」についての記載は必須となります。

本人に計算能力や管理能力があるのに本人の同意なしにその人の金銭を他人が管理することは経済的虐待に該当する可能性があるためです。

2−5:怒りっぽくなってきた

「怒」と書かれた写真

「自分が認知症になってしまった」なんて誰しも認めたくないもの。

それでもどうしても思い出せないことが増えてきたり、今までできていたこと手順を忘れてしまうのは本人にとっては恐怖であったり、うつの引き金を引くことにもなりかねません。

それでも家族をはじめ、他人には言えない。

そういったイライラが怒りという形で表出します。

理路整然とした思考が難しくなるため、相手の行動を制御するために怒りの感情を使うのです。

認知症に限った話ではありませんが、怒りは比較的簡単に相手に影響を与えることができるのでよく使われます。

「怒り」は障害の受容の過程において「うつ」とともによく現れるので観察のポイントとなりますし、周囲の助けが必要な場合が多いです。

2−6:冷蔵庫の中の管理ができなくなってきた

カビたパンのイラスト

賞味期限が切れた食べ物が増えてきたり、冷蔵庫の中で食べ物をたくさん腐らせてしまったり。

正直言うと、若い人でもこういう人は多いのでそれだけでは決められませんが、もともときっちりと管理できていた人が、管理できなくなってきている場合は管理する能力が落ちてきているのかもしれません。

記憶障害やヤル気の無さ。

そもそも腐っているという認識ができていない。

原因は色々とあるかもしれませんが、認知症の方は冷蔵庫の中の管理ができていない場合が非常に多いです。

冷蔵庫は口に入れる食べ物を管理する場所。

家族やヘルパーさんは冷蔵庫の中の管理には細心の注意を払わなければいけません。

なぜか冷蔵庫から下着や石鹸が出てきたこともあります。

2−7:家の中が乱雑になってきた

乱雑なシンクの写真

冷蔵庫と同じですが、こちらも片付けられなくなっているケースです。

若い人でも部屋を片付けられないケースはあると思いますが、あくまでも今まで家を綺麗にしてしていた人が出来なくなっている場合です。

決められた場所に物を戻すことができなくなってきている場合も認知症が疑われます。

このような様子は急には出ませんが、たまに立ち寄る家族などは「あれ?」と気づくことがあるでしょう。

ひどい場合になると、通帳や保険証などの大切な物を失くしてしまったりビリビリと破いてしまうケースもあります。

2−8:家の中に変な匂いがするようになった

変な匂いがするイメージ

トイレでない場所で便の匂いがしたり尿の匂いがする場合があります。

汚してしまった衣類を洗うことができなくなっていることもあります。

足の筋力低下や腰の痛みなどでトイレに間に合わないなど、明らかな身体的原因がある場合もあると思います。

しかし「変な匂いがするのに気にならない」というのは認知症が疑われるケースです。

認知症の方は嗅覚の異常と思われる様子が現れることがあります。

「この部屋ちょっと匂うな」と感じたら要注意かもしれません。

2−9:料理の味がおかしくなった。料理を作らなくなった

美味しそうな和食のイメージ

嗅覚障がいを原因とする場合もありますが、多くは調味料の入れ忘れが原因で味がおかしくなることが多いです。

あと危ない話ですが、火をかけっぱなしにしていたり、よく料理を焦がすことが増えてくると大変危険です。

早めの介入を要するケースです。

そもそも料理を作るのが得意だったのに、料理を作らなくなったというようなことも心配な材料です。

もし老々介護の場合、お母さんが認知症になるとお母さんだけではなく一緒に住んでいるお父さんの食事もままならない状況になるので料理に関する観察ポイントも重要です。

味は食べてみないとわからないので、実家に帰省したときなどはなるべくお母さんやお父さんが作った手料理を食べるようにしてください。

でもお母さんやお父さんの手作りの食事を食べる本当の意味は、認知症のチェックではありません。

親も歳を取ってきたら、急に別れの日が来るかもしれません。

結婚や就職などで実家を出たら、あと何回お母さんの手料理が食べられるか分からないなという気持ちを少し持って食事を召し上がってください。

2−10:ヒヤリとしたり、ハッとすることが増えてきた。特に火の不始末!!

消防車のおもちゃの写真

認知症の症状の中に「注意障がい」や「判断力の低下」があります。

認知症が原因で車の運転で事故を起こすこともあります。(注:交通事故を引き起こす件数が圧倒的に多いのは若年層ですが、事故率で見ると圧倒的に多いのは85歳以上です)

交通事故だけでなく、火の不始末も認知症の場合大きな問題となります。

一回でも火の消し忘れがあったら早急に市区町村の介護保険課か地域包括支援センターに相談してください。

併せてガスコンロなどから、「切り忘れ自動OFF」機能が付いたタイプIHクッキングヒーターなどに変更するようにしてください。

また一部の市区町村ではガスコンロからIHクッキンヒーターに変更するときに補助金を支給(もしくはIHクッキングヒーターを支給)してくれるところもあるので、ダメもとで窓口か担当のケアマネジャーさんに確認してみてください。

タバコを吸っている方も要注意です!!

タバコは誰かが一緒にいるときにだけにするなど、本人との話し合いが必要になります。

3:他人に知られたくない本人の気持ちと事故防止

まとめですが、本人には「認知症かもしれない」という気持ちを隠そうとする心理が働きます。

そのため、自分からはなかなか言ってくれません。

家族も「あれ?」と思いながらも「まだ大丈夫かな?」「年相応の物忘れかな?」で済ませてしまうことも多いです。

実際には認知症の診断が付いた人やご家族と話していると、診断日の3年くらい前から「何らかの異変」に気づいているケースが多いです。

本人の立場に立ってみると、家族が「何らかの異変」に気づくもっと前から「何だかおかしいな」と気付いています。

そのため認知症患者さんが長い間一人で苦しみます。

ときには家族や介助者から「何でそんなことができないの?」と咎めらたことがあるかもしれません。

本人が悪いわけではなく、あくまでも認知症という病気のせいです。

認知症は現在のところ治りません。

そして周囲のサポートが必要な病です。

「2−10」で述べたように、本人や家族の意に反して交通事故や火災を引き起こすリスクも高くなります。

今回はそういった事故や火災を未然に防ぐ意味でも、みなさんの参考になれば幸いです。