【救急対応】なぜ「むくみ」が命に関わるの?今さら聞けない、大切な人を守る「むくみのリスク」について

胸が苦しいイメージ

1:【救急対応】なぜ「むくみ」が命に関わるの?今さら聞けない、大切な人を守る「むくみのリスク」について

体重測定のイメージ写真

体重測定していますか?

健康管理に大切な体重測定ですが、体重計に乗るのがコワイ女子も多いのではないでしょうか?

若い人が体重の増減を気にするのはダイエットのためだったりしますが、高齢者の場合は命に関わる重要なサインを見つけ出すために体重測定が大切になります。

私が考える最も怖いものの一つが「むくみ」。

漢字で書くと「浮腫み」です。その字から「浮腫(ふしゅ)」とも呼ばれます。

カルテや往診記録、介護記録には「ED」と書くこともあります。

浮腫みのことを医療用語で「エデーマ(edema)」というので、その略語です。

同じ「ED」だからと言って、男性の機能不全の「ED」と間違えないように注意しなければいけません💦

今日は、時には命にも関わる「むくみ」と「体重測定の重要性」についてご紹介します。

2:「むくみ」を甘く見ると命取りになることがある

胸が苦しいイメージ

介護施設で恐れられているのが「急な体重の増加」。

もちろん介護施設に限った話ではありません。

一般的には「急な体重の減少」も大問題ですが、実際の介護現場では急に体重が増加するケースが多く、中には命を脅かすものが少なくありません。

急に体重が増える原因は「むくみ」。

「最近太ってきたかなぁ?」くらいの体重の増加であればあまり心配しないのですが、「急に体重が増えてきた」となると「むくみ」が原因となっていることが多く話が全く変わってきます。

ちなみに私の場合、普通に体重測定をしていて1週間で3kg以上体重が増えていたら「むくみかな?」と疑うようにしています。

もちろんもともと体が大きい人や体重測定の直前に「食べ過ぎ」や「飲み過ぎ」があればこの限りではありませんが、普通の食事量でこのくらいになると注意するに越したことはないと思っています。

3:「むくみ」は循環器系の疾患のサイン

3−1:突然死を防げ!急性心不全を疑う

急性心不全のイメージ写真

「むくみ」の裏には「心疾患」や「腎疾患」などの循環器系の疾患が隠れていることが少なくありません。

特に「急性心不全」の場合は「突然死」の可能性を秘めています。

「たかがむくみ」と思わず、「むくみ」が出たら病院に行くようにしてください。

「心房細動」や「左脚ブロック」などで医師から「慢性心不全」と言われている人でも、急にむくみが出てきたら病院に行くようにしましょう。

胸水(きょうすい)が溜まっていたり、肺炎の併発などのリスクがありますし、場合によってはペースメーカーが必要なケースもあります。

ちなみに「心不全」とは病名ではありません。

様々な心疾患の結果として出てくる「症状」のひとつです。

つまり「心不全」があるということは、その影にいろいろな心疾患が隠れている可能性があるわけです。

もっと詳しい心不全の情報については国立循環器病研究センター病院のホームページの「心不全」のページがわかりやすいと思いますのでリンクを貼っておきます。もしよろしければこちらもご参照ください。

3−2:おしっこはしっかり出てる?腎臓疾患を疑う

腎不全のイメージ写真

腎臓疾患でも「むくみ」が見られることが多いです。

尿がしっかりと出せていない場合は、体内から水分がなかなか抜けず逆に溜まっていってしまいます。結果、体重が増えます。

その場合、腎盂腎炎(じんうじんえん)のリスクや尿毒症(にょうどくしょう)などのリスクが出てきます。

尿が出ない原因が腎臓にあるのか尿管(腎臓から膀胱につながる管)や膀胱を含む尿路にあるのかはわかりませんが、どちらにしても尿が出ていない場合は大問題ですので速やかに医療機関を受診する必要があります!

ちなみに腎盂腎炎とは細菌が腎臓に感染する感染症で、尿毒症については以下に症状をまとめておきます。

尿毒症の症状
  • 尿量の低下
  • 浮腫(むくみ)
  • 息苦しさが出る
  • 血圧上昇
  • イライラする
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • 不眠
  • 食欲低下
  • 吐き気
  • 口臭が出る
  • 皮膚が黒っぽく変色する
  • 痒み(かゆみ)の出現  など

また全身に「むくみ」が見られる場合はネフローゼ症候群の場合もあります。

ネフローゼ症候群も介護現場ではよくお目にかかります。

病院で検査をすればある程度分かるのですが、ネフローゼ症候群も放置しておくと人工透析や腎臓移植などにつながる問題を抱えることになりますので、やはり「むくみ」が見られたら早めに医療機関を受診するようにしてください。

そして目先の恐怖は、なんと言っても「胸水(きょうすい)」です。

4:最恐!胸水(きょうすい)

溺れるイメージ写真

少々大げさに刺激的なイメージ写真を使用しましたが、胸水の怖さを伝えたくてこのような写真を使いました。

胸水は簡単に言うと肺に水が溜まって「溺れている」感じになることです。

胸水と海やプールで溺れることとは違いますが、胸水のことを「肺が溺れている状態」と説明する医師はかなりいます。

胸水の原因は、うっ血性心不全やネフローゼ症候群などの疾患ですが、肺内の正常な圧力のバランスが崩れることで肺に水がたまっていきます。

当然、胸水が溜まると息苦しくなったり呼吸困難になります。

「身体にむくみがある」ということは「胸水のリスクもある」ということ。1人でも多くの人に、息苦しさや呼吸困難が出る前に病院に行ってもらって治療していただきたいということが、今日、このブログを書いている目的です。

そもそも「むくみ」の原因も、通常は体内で維持されている正常な水分割合が、心疾患や腎臓疾患などでバランスを崩すことによって、組織と細胞の間に余分な水分が溜まることで起こります。

つまり「むくみ」が出た段階で、胸水などのリスクを予測し早めに病院やクリニックなどの医療機関を受診することは、本人の苦痛を軽減するだけでなく命を救うことにもつながるのです。

そしてもしパルスオキシメーターをお持ちの場合、酸素飽和度が94%以下で呼吸不全の疑いがあり、90%を下回ると呼吸不全なのですぐに救急車を呼ぶようにすることを覚えておいてください。

5:まとめ。循環器系以外の疾患の可能性も

胸水のイメージ図

「むくみ」には心疾患や腎臓疾患が隠れている場合がよくありますし、ここまでは書きませんでしたが、がんや肝硬変なども「むくみ」の原因として挙げられます。

病院は来院してきた患者さんを治療するところですが、病院に行くまでに危険なサインに気付くことができるのは本人や家族、介護職員です。

「むくみ」が出たら同時に「胸水」のリスクも出てきますので、「たかがむくみ」とスルーすることなく胸水までイメージしていただけるようになると幸いです。

病院に受診した結果、特に何も疾患がなければそれは本当に幸いなことなので、まずは急激な体重の増加を伴う「むくみ」が出たら医療機関を受診するよう心がけてください。

中にはあまり浮腫んでいないのに体重が急に増えていくケースもあります。

そういった場合は体重測定がなければ、なかなか体の「異変」に気付けません。

「毎日」もしくは「週に2、3回」の体重測定を行う本当の意味はそこにもあると思います。