【排泄の問題】夜間頻尿を解消してQOL(生活の質)を向上させよう!失禁の内的要因のアセスメント!

頻尿の写真

1:【排泄の問題】夜間頻尿を解消してQOL(生活の質)を向上させよう!失禁の内的要因のアセスメント!

リスクファクターと書かれた文字

お年寄りの中には夜間頻尿が原因で寝たきりになる方も多くいます。

どういうこと?

「夜間にトイレに行く回数が多い」ということは、「転倒のリスクが高くなる」ということ。

「部屋が薄暗い」「若干寝ぼけている」「トイレに急ぐ」というだけでも、日中に比べると夜間トイレに行くことの方が転倒のリスクが高くなることが理解いただけるのではないでしょうか?

おまけに寝る前に「眠剤(睡眠導入剤)」などを飲んでいれば、なおさらリスクは高くなります。

できれば日中にしっかりとトイレに行って、夜間はせいぜい1回のトイレで済ませたいところ。

介護の現場では夜間に2回以上のトイレで「夜間頻尿」としてアセスメントを開始する場合もあります。

今日は夜間頻尿の原因とその対策についてお話しようと思います。

ちなみに失禁の内的要因とは、失禁に際して膀胱機能や尿道機能の問題のことを言います。

2:まずは尿路感染症の可能性を排除しよう!

腎臓、尿管、膀胱の図

排尿のアセスメント(分析、対策、評価のこと)は膀胱の機能や移動能力、部屋の環境など多岐に渡るのですが、まず最初に行うのは尿路感染症の可能性を排除することです。

なぜなら、お年寄りに限らず尿路感染症は比較的多い感染症であることに加えて、薬で比較的簡単に治療することが可能だからです。

そもそも尿路感染症は放っておくと、最悪の場合は「敗血症」などで命を落とすこともある怖いものです。

「頻尿」という症状だけでなく、「なんだかいつもと違うな」という感覚は非常に大切です。

「だるい」「寒気がする」「熱がある」「苦痛がある」など「いつもと違う」症状が出たら、速やかに医療機関を受診するか、臨時往診に来てもらうようにしましょう。

特に女性は年齢を問わず尿路感染症にかかりやすいです。

理由は女性は男性に比べて尿道が短いから。

おしっこをガマンしていたりすると尿道口から入ってくる細菌をおしっこで洗い流してしまう前に、膀胱へ細菌の侵入を許してしまいがちです。

尿道の長さの比較図

ですから特に女性は膀胱炎や尿路感染症には注意が必要ですし、「なんだか調子が悪いなぁ」と思ったら尿路感染症を疑うクセをつけておいた方がいいです。

医療機関を受診すると採尿や採血で尿路感染症か調べてもらえます。(ただし、検査結果が出るまで時間がかかる場合があります)

検査の結果、尿路感染症であればお薬で治療することになります。

そして辛い症状や頻尿が消えればめでたし、めでたし✨

それ以降の排尿のアセスメントは必要ありません。

だから、最初に尿路感染症の可能性を排除してしまうのです。

3:膀胱の機能を評価しよう!泌尿器科受診でわかる内的要因。自宅でもある程度わかります

医師の写真

3−1:必ず本人の同意を得る

同意のイメージ

これ、非常に大切ですが省いている場合が多いです。

本来は本人に確認し同意を得るのが普通なのですが、認知症の方の場合だと「どうせ言っても分からないから」という理由で確認することを怠る場合があるのです。

羞恥心に関わるところなので、認知症の方であっても同意を得るように努めましょう。

誰だって嫌ですよね?いきなり勝手におしっこの量とか測られたら😓

でも高齢者介護の現場では、本人の同意をスッ飛ばしてしまうことがよくあるのです。

気をつけないといけないな、と思います。

3−2:「内的要因」を把握する

採尿のイメージ

それでは、いよいよアセスメントの開始です。

とは言っても決して難しいことではありません。

失禁の内的要因の把握は、泌尿器科に受診すれば簡単にできるので早めに泌尿器科を受診しましょう。

泌尿器科で膀胱や尿道の機能を調べてもらえます。

しかし本当にお伝えしたいことは以下のことです。

泌尿器科に行く場合でも、普段のだいたいの尿量や残尿感などの簡単な情報は用意しておくこと。

情報がないと医師も困ってしまいますからね😅

泌尿器科に限った話ではありませんが、医師に診てもらうときは事前に紙やスマホなどに医師に聞きたい事と、伝える情報をまとめておきましょう。

何も用意していないと、肝心なことを聞き忘れてしまったり医師に伝え漏れたりするものです。

ですから事前の準備は大切です。

そして泌尿器科でも検査はしてくれますが、採尿時におしっこが出なかったりすることもあります。

泌尿器科に行くときには「採尿検査」があることも念頭に置いておきましょう。

施設に入居しているかたの場合はスタッフの手を借りて簡単に事前の準備をすることができるので、その方法を紹介します。

施設のスタッフ向けのお話ですが注意するポイントがいくつかあるので、それを解説します。

まずは1回あたりのおしっこの量を測ります。

尿量を測る専用の計量カップや、トイレの中に置くタイプの「ユーリパン」という物を使います。

計量カップを使用する場合は、間違っても厨房のものは使わないようにしましょう!

尿量測定をする目的は「膀胱にしっかりと尿が溜められているか?」の確認です。

「しっかりとおしっこが出ているのか?」。反対に「しっかりとおしっこが出た感覚がないのか?」といったことも重要になるので、それらも併せて把握するようにしてください。

ちなみに健康な成人だと1回あたりの排尿量は150mlから300ml程度ですので、それより明らかに少ない場合は「膀胱にしっかりと尿が溜められていない(蓄尿障害)」もしくは「膀胱には尿が溜まっているけど、しっかりと出し切れていない(排出障害)」の可能性があります。

また「勢いよくおしっこが出ているか?」というのが一つの目安になります。

排尿に問題がある場合「おしっこがチョロチョロとしか出ない」という現象がよく見られます。

若い頃のように勢いよくおしっこが出ないとしたら、それも気に留めておく必要があります。

施設によっては残尿を測る機械(ブラッダースキャナー)を持っているところもあるので、施設に機械がある場合はそれ使って残尿測定をするクセをつけましょう。もちろんご本人の同意のあとで!

3−3:切迫性尿失禁と溢流(いつりゅう)性尿失禁

膀胱と前立腺の模型の写真

内的要因としては「過活動膀胱」と「前立腺肥大」が有名なところです。

もちろん他にも原因はありますが、この2つは特によく見かけます。

ごく稀にこの2つの混合型の人もいます。

切迫性尿失禁の原因として多いのは過活動膀胱。

溢流性尿失禁の原因として多いのは前立腺肥大です。

おしっこが膀胱にあまり溜まっていないのにトイレに行きたくなるのが切迫性。

過活動膀胱とは、本来は膀胱いっぱいに尿が溜まるところが、少し尿が溜まっただけで尿意を催しトイレが近くなる症状です。

膀胱のイメージ図

一方、トイレに行ってもしっかりと出しきれずに排尿後も残尿感があり、実際に排尿後に出し切れていない尿が膀胱内にいっぱい溜まっているのが溢流性。

溢流性の原因で一般的に男性に多いのは前立腺肥大。

前立腺は尿道の周りにある臓器ですが、これが肥大することによって尿が出にくくなるものです。

つまり、うまく尿が膀胱に溜まらないのが切迫性。

うまく尿が出し切れないのが溢流性。

厳密には違うのですが、介護現場では便宜上このように分けて対策を立てていきます。

泌尿器科に行くと医師から検査結果の説明があると思いますが、どちらのタイプの頻尿かを理解しておくと今後の対応がしやすくなります。

今後の対応といっても難しいことではありません。

まずは切迫性、溢流性のタイプに応じて泌尿器科の医師が薬を処方してくれます。

薬を飲み始めたら、頻尿が改善しているかどうかを「観察」することが対策になります。

実は、泌尿器科の医師の場合は適材適所の薬を処方してくれるので心配は要らないのですが、内科医の場合は切迫性の方に溢流性の薬が処方されていたり、溢流性の方に切迫性の薬が処方されることが時々あります。

私たちは薬が開始されたらその結果をきっちりと観察し、そして観察の結果「症状が改善したのか?」「改善していないのか?」を再度医師にきっちりと伝えることが大切です。

薬の写真

4:足は心臓に次ぐ第2のポンプ!足の浮腫(むく)みを確認しよう!

4−1:足の浮腫(むく)みは循環器系の異常のサイン

足の浮腫の写真

摂取した水分が膀胱に溜まらない場合は、下肢(かし)に溜まることが分かっています。

原因はいろいろあり運動不足や座った状態が長いことなどが挙げられます。

どうしても足の筋力が衰えると水分は重力に従い下に降りてきます。

そして下肢の特にふくらはぎに水分を溜めてしまいます。

「足が浮腫(むく)んできたな?」と思ったら、循環器系の疾患の可能性があります。

浮腫みは加齢により足のポンプが衰えていることが一因ですが、心臓の働きの衰えを原因とする心不全があることも多いので注意が必要です。

介護現場でも足の浮腫みはしょっちゅう確認します。

そして浮腫んでいるようならすぐに医師に連絡するようにしています。

「浮腫み」は場合によっては深刻な疾患の可能性があるからです。

4−2:超重要!弾性ストッキングを使用するときは必ず医師に相談してください!

弾性ストキングの写真

大体の場合は利尿剤が処方されるのですが、最近の医師は「弾性包帯」や「弾性ストッキング」の使用を指示を頻回に出されるようになりました。

毎回20年近く訪問診療に立ち会っていると、年々医師の指示の出し方や治療方針が進化していることに気づかされます。

弾性包帯や弾性ストッキングは、下肢(膝から下)を包帯やストッキングで締め付ける物です。

テレビでも紹介されたためか、使用する人が増えている印象です。

しかしここで注意なのですが、自分の勝手な判断で弾性ストッキングなどは使用しないでください。

足を締め付けるので、血行を促進する反面、血流などの薬を服用している人などには逆に血栓ができやすくなるなどリスクになることも考えられます。

もし弾性ストッキングなどを使用したいと思うなら、事前に医師に相談してから使用を開始してください。

4−3:で?実際の弾性ストッキングの効果は?夜間頻尿には一定の効果あり!

結論から言うと、夜間頻尿を減らす効果があると思います。

施設では排尿チャートなどを利用してデータを取るのですが、弾性包帯や弾性ストッキングを使用すると実際に夜間頻尿を減らす効果が認められています。

ただし個人差があったり、その人が飲んでいる薬によっても効果が左右されるので一概に言えるものではありません。

5:なぜ弾性ストッキングが夜間頻尿改善に有効なの?そのメカニズムについて

5−1:下肢(かし)のふくらはぎに余分な水分が溜まる理由

下肢の浮腫のエコー検査のイメージ

理由①:重力の影響

普通人間は立って生活しているか、座って生活することが多いので、どうしても重力の影響を受けて足に血液が降りてきやすいです。

理由②:足のポンプの衰え

若く健康な人なら日常の運動で足に降りてきた血液を上半身に押し上げることができます。

そもそも人の体は心臓だけで全身に血液を送っているわけではなく、足(特にふくらはぎ)も重要なポンプの役割を果たしています。

しかし運動量が少なく、足の筋力も衰えている高齢者だとどうしても足に血液が溜まりやすくなります。

溜まった血液は、ふくらはぎの「間質」と言うところに水分を溜め、また心臓の方に戻っていきます。

弾性包帯や弾性ストッキングは、ふくらはぎを締め付けて物理的に水分が足にたまらないようにするものです。

5−2:ベッドや布団で横になると足に溜まった水分が膀胱に溜まってくる

下肢の水分が流れるイメージ

足に水分が溜まるのは「重力の影響」と「足のポンプの衰え」が原因であることはお話ししました。

そのため、夜にベッドや布団に横になると足に溜まった水分は重力から解放され、全身に流れ始めるようになります。

その結果、本来の場所である膀胱に水分が溜まるようになります。

日中は足に水分が溜まる。

そして夜間は膀胱に水分が溜まる。

夜間に頻尿になるのはこのためです。

6:まとめ

排尿の問題は、単に「トイレが近くて困る」という問題だけではなく尿路感染症や腎臓疾患などが隠れている場合があります。

特に「体調が優れない」などの症状が出ている場合は、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

ケアマネジャーの方は医師に相談する際に本日お話しした内容を参考に困っている症状をお伝えいただくと利用者さんのアセスメントがやりやすいのではないかと思います。

特に夜間頻尿はQOLを落とす大きな要因となりますので、排尿に関する内的要因のアセスメントの力添えになれば幸いです。