もくじ🔖
1:【排泄の問題】トイレに間に合わない!そんな時の対処法。失禁の外的要因のアセスメント!
内的要因に問題がなくても、外的要因に問題があればトイレに間に合いません。
「失禁に関する内的要因」とは膀胱や尿道機能の問題などです。
誤解を恐れずもっと解りやすく言うと「疾患や障害を含む泌尿器関連の問題」です。
失禁に関する「外的要因」とは「失禁に関する内的要因以外すべて」と理解すると解りやすいと思います。
今回はトイレに間に合わない原因とその対策をご紹介します!
実はお年寄りだけでなく、若い人でも失禁をする場合は内的要因よりも外的要因の方が問題になるくらいです。
あまり愉快な話ではありませんが、飲み会でお酒を飲み過ぎて駅やお店で寝てしまったりしたときに時々失禁してしまう人がいます。
この場合、酔っ払って「トイレの場所がわからない」や、そもそもフラフラで「トイレまで歩いて行けない」といった事が原因となります。
彼らの多くは泌尿器関連の疾患があるわけではありません。
つまり彼らの失禁の原因は内的要因ではなく外的要因なのです。
「用をたす行動」を追って理解してしまえば解りやすいので、今回は「トイレに関する行動」になぞって説明していきます。
2:外的要因とは内的要因以外全部!トイレの場所を認識してから排泄するまでの一連の動作の確認しよう!
2−1:トイレの場所が分かりますか?
内的要因は膀胱、尿道などの機能の問題であることは説明しました。
では、外的要因は?
「外的要因は内的要因以外すべて」となります。
まずトイレ動作全てを考えてみましょう。
それでは最初の質問。
「トイレの場所がわかりますか?」
はっ?そんなの分かるよ!
でも認知症の人などはトイレの場所が分からなくなっていることもしばしばありますし、健康な人でも初めて行く場所などではトイレを探すのに困ることがあります。
公共交通機関やデパートなどでトイレがどこにあるか分からず困った経験はありませんか?
「トイレの場所の認知の問題」というのは、実は1番目の外的要因なのです。
そして多くの人の場合、初めての場所以外で「認知」というのは問題ありませんが、認知症や記憶障害がある方の場合は問題になります。
この場合の対策は「そこがトイレとわかるようにすること」。
「トイレはここです」「ここがトイレです」などの貼り紙をするのも良いですし、トイレの標識などを表示しておくのも手です。
「電気代がかかる」というデメリットはありますが、夜間だとトイレに明かりをつけておくことも有効です。
2−2:トイレまで行くことができますか?
「トイレまでの移動の問題」です。
トイレも場所は分かっていても、そこまで移動できなければトイレに間に合いません。
歩くことに障害がある人だけでなく、足の踏み場もないような乱雑な部屋からだとトイレに行くのも一苦労ということもあります。
健康な人でも高速道路で車に乗っていて「次のパーキングエリアまで渋滞が続いていてすぐにトイレにたどり着けない」ということがあるかもしれません。
これも「トイレまでの移動の問題」で外的要因の一つです。
過程で高齢者のケアをするときは、対策としてベッドを部屋の出口付近に移動してトイレまでの動線(「道のり」のこと)を短くしたり、ベッドの横にポータブルトイレを設置したりして「移動」の問題の軽減・解消を図ります。
ポータブルトイレに関しては、ネットなどでそのまま購入してもいいですし、介護保険を利用している人なら「特定福祉用具販売」という名前の介護サービスを利用して保険を利用して買うこともできます。
詳しくはケアマネジャーさんに相談していただくと、介護保険が使えるようにしてくれますので遠慮せず相談しましょう!
そもそも足が悪い方などは車椅子やポジショニングバーを併用することで移乗がスムーズに行えることがあります。
どちらも介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」が使えるので、こちらもケアマネジャーさんに相談しましょう!
ただし有料老人ホームが介護保険の「特定施設入居者生活介護」という指定を都道府県から受けている場合、そこに入居していると車椅子やポジショニングバーのレンタルや購入に際して介護保険が利用できず実費になることがあるので事前に確認することをおすすめします。
2−3:ズボンやスカートはすぐに脱げるようなものですか?
トイレまで無事にたどりついたけど、ズボンやスカートがすぐに脱げないものであれば「間に合わない」ことがあります。
着物やオーバーオールなどは、しょっちゅう着る物ではないと思いますがベルトやボタンが外しにくいものであっても「間に合わない」原因になります。
つまり「脱ぎにくい衣類の問題」という外的要因になります。
脱ぎ着に不安がある人は、普段からボタンのないものやすぐに脱ぎやすい衣類を考えておく方が良いでしょう。
2−4:手は自由に使えますか?
「手の動作の問題」という外的要因です。
トイレに無事にたどり着いて、衣類が脱ぎやすいものでも手に障害があったり、骨折や怪我などで自由に手が使えない場合もトイレに間に合わないことがあります。
また物を持っている場合も手が自由に使えなくなるので注意が必要です。
例えば杖とか、、。
手がうまく使えない場合は介助が必要なことが多いです。
しかしまずは1人でできるように援助するのが基本です。
杖は壁にもたれかけさせたり、4点杖のような杖を使って倒れないようにする工夫が必要です。
そして手すりが無いトイレでは、自分も倒れないように自分もトイレの壁にもたれながら下着を脱ぎ着するような工夫も必要です。
2−5:糖尿病だったり、利尿剤を飲んだりしていませんか?または睡眠導入剤などは飲んでいませんか?
糖尿病の人には「喉が渇く」という症状がよく出ます。
原因は腎臓が血中の高血糖状態を改善するために尿と一緒に糖分を排出しようとするためですが、結果として脱水傾向になるため、今度は脱水を回避するために水分を摂る量が多くなりがちです。
そのため糖尿病の人は尿量が増えることがよくあります。
また利尿剤を服用している場合も、尿の量が増えるのでトイレに行く回数が増えたり、切迫感が出たりします。
疾患によっては、なかなか医師も治療中の薬を変更したり中止の判断をすることは難しいと思いますが、患者さんから「夜間の頻尿を減らしたい」と医師に相談する価値はあると思います。
実際に困っていて、生活に影響が出ている場合はなおさらです。
医療には体を治す以外にも、生活の質(QOL)を高める目的があります。
ですから「生活で困っている」と相談したら、もしかしたら医師が服用する時間を変更してくれるかもしれません。
夕食後に利尿剤が処方されていれば、夜間にトイレに行きたくなるのは当たり前です。
言葉を変えて言うと医師の仕事は患者が困っている身体的・精神的な問題を軽減もしくは解決すること。
少し勇気がいるかもしれませんが、遠慮なく自分が困っていることを医師に伝えるようにしましょう。
「夜間に1人でトイレに行きたいけど、睡眠導入剤がよく効いているためにシャキッと起きてトイレに行く事ができない」というような悩みなども医師に相談して良いと思います。
本人がなかなか言えない場合は、家族のみならず、訪問看護師やケアマネジャー、施設に入居している場合は施設のスタッフにお願いして代わりに言ってもらうのも全然アリです。
2−6:外的要因の番外編!晩酌が夜間頻尿を引き起こすことも覚えておきましょう!
簡単なメカニズムですが、晩酌が夜間頻尿を引き起こすのは飲酒が利尿作用を引き起こすためです。
おまけに晩酌の時って、おつまみも食べますよね。
おつまみは塩分が含まれているものが多いですから、「塩分摂取→血圧上昇→血圧を下げるために利尿」という体の働きも関係してきます。
夜間頻尿をなんとかしたい場合は、晩酌を控えたり、飲むお酒の量を減らすなどの工夫が必要です。
寝る直前ではなく、夕方の早めの時間にお酒を飲むのも良いと思います。
3:まとめ。失禁の問題は外的要因だけでなく、内的要因、尿路感染症など総合的に分析する
今日は「失禁に関する外的要因」のお話でしたが、失禁には膀胱・尿道機能に問題がある内的要因も関係することは先述した通りです。
そもそも膀胱炎や尿路感染症なども尿意の切迫感を誘発する事があります。
膀胱炎や尿路感染症は軽く見ると敗血症など命に関わる疾患にも繋がる恐れがありますので、「おかしいな?」と思ったら早めに医療機関を受診することを忘れないでください。
失禁の内的要因の記事でも書きましたが、本来は失禁の問題を考えるときは「膀胱炎や尿路感染症」は1番に疑い、1番に対処し、1番に可能性を潰しておかなければいけないところになります。
順番としては「①感染症の可能性を潰す②内的要因、外的要因を並行して考える」となります。
順番を間違えると本人が苦しむだけでなく、手遅れになった場合は命を落とすこともあるので細心の注意が必要です。