今日は相続税のことを教えてください。
難しいものなの?
相続税はちょっと難しくて、あらかじめ準備しておかなければ、いざと言うときに慌てることが実は多いんだ。
今日は相続税の基本中の基本をお話しするよ。
お急ぎの方は「税理士ドットコム」などで相続に強い税理士さんを探すと良いと思います。相続放棄する場合は3ヶ月しか猶予がありませんし、故人の借金を相続するリスクがあります。
もくじ🔖
1:【相続】故人の兄弟や親は相続人になる?超絶カンタン!相続税の基本。 相続人の範囲と遺留分
本来は死亡した人を「被相続人」、相続する人を「相続人」と言いますが、ここではわかりやすくするためにそのまま「死亡した人」「相続する人」と言うようにします。
相続税は、「死亡した人」が持っていた財産を「相続する人」に相続するときにかかる税金を言います。
1−1:相続するものはいわゆる財産だけではない。借金やもっと恐ろしい物も相続の対象となる
「相続」と聞くと「死亡した人」が持っていたお金や不動産を思い浮かべることが多いと思いますが、実は借金も相続の対象となります。
そしてもっと恐ろしいのが「連帯保証人」になっている場合などの法的地位。
知らずにそのまま相続すると、そのうち怖い人が自宅に押しかけてくることもあり得ます。
1−2:死んだ「瞬間」から相続が始まる
相続する人が「死亡した人」が死んだことを知っていたかどうかは関係ありません。
相続は死んだ「瞬間」から始まります。
死んだ「瞬間」から相続が始まるのに対して、実際の相続税の申告期限は「死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」となることに注意が必要です。
2:相続する人は誰?基本的に嫁や娘の旦那は対象外
2−1:死亡した人の配偶者は常に相続する人になれる
死亡した人に長年連れ添った配偶者は常に相続する人です。
人生を共にした伴侶として、財産を相続するのは至極当然のことです。
しかし、つい最近死亡した人と結婚した人も配偶者として相続人になれます。
「後妻業」という「相続財産ねらいの結婚」が話題になるのはこのためなんです😓。
さらに言うと、長年人生を共にしたとしても内縁の妻や離婚してしまった元妻は、そのままでは相続人にはなれません。
相続人になるには死亡した人の「遺言」が必要です。
2−2:次に優先されるのは死亡した人の子ども
配偶者の次に優先されるのは子どもです。
子どもはみな平等で、男女、兄弟、実子と養子の間に区別はありません。
子どもがいる場合は、配偶者と子どもだけで相続する人は終了です。
子どもは「直系卑属」と呼ばれ、配偶者を除いた第1順位の相続人です。
死んだ人が再婚であった場合、元配偶者との間に生まれた子どもや、はたまた「愛人」との間に生まれ認知された子どもも相続人になります。相続分は現在の正式な配偶者との間に生まれた子どもと同じ割合であり、前妻との間の子どもだからとか、愛人との間に生まれた子どもだからという理由で差をつけられることはありません。(ただし遺言がある場合を除く)
ちなみに配偶者は常に相続人になるので、第1順位とか第2順位とかいった区別はありません。
2−3:養子の人は注目!!普通養子と特別養子
養子には二組の親が存在します。
いわゆる「産みの親」と「育ての親」。
養子には普通養子と特別養子があるのですが、扱いが異なります。
一般的には普通養子が多く、普通養子の人は「産みの親」の相続も「育ての親」の相続もできます。
しかし特別養子の人は「産みの親」との親族関係がなくっているため「産みの親」の相続はできないので注意が必要です。
2−4:死亡した人に子どもがいない場合は親に権利が発生
夫婦に子どもがいない場合は「死亡した人」の配偶者に加えて親が相続する人になります。
しかし子どもがいた場合、親は相続する人になりませんので注意が必要です。
親は「直系尊属」と呼ばれる第2順位なので、第1順位の「直系卑属」とは扱いが全く異なるのです。
できれば親より先に死にたくはないですが、そういうことがあるのも事実なので、、。
2−5:死亡した人に子どもも親もいない場合は、死亡した人の兄弟姉妹に権利が発生
「死亡した人」と子供の頃から一緒に育ってきたのに、相続という点では一番遠いところにいるのが兄弟姉妹なんです。
「死亡した人」に子どもがいれば相続権は発生しないし、親がいても相続権が発生しない。
腑に落ちない人がいるかもしれませんが、相続税法上はそういうものなのです。
そして死亡した人の兄弟姉妹には「遺留分」というのがありません。
遺留分とは民法で定められている「最低限相続できる財産」です。
遺留分についての詳細は後述します。
さらに、死亡した人の兄弟姉妹には扱いが2通りあります。
死亡した人と両親とも同じ親の場合は「全血兄弟姉妹」と呼ばれ、兄弟姉妹間の扱いは平等です。
しかし死亡した人と片親しか同じでない場合は「半血兄弟姉妹」と呼ばれ、「全血兄弟姉妹」の半分しか相続できないことになっています。
2−6:死亡した人の子どもがすでに亡くなっている場合は孫に相続権が発生。代襲相続とは?
本来、相続すべき死亡した人の子どもが既に亡くなっている場合はその孫が相続を引き継ぐことができます。これを代襲相続といいます。
「夫」が死亡した場合に相続できる人を図で説明します。
上記のケースの場合、長男が既に亡くなっていますが長男には子ども(夫から見ると孫)がいるため、孫が長男に変わり相続の権利が発生します。
妻は配偶者なので常に相続人ですし、長女も相続できます。
しかし長女の子ども(夫から見ると孫だが)は長女が相続人になるので相続権は発生しません。
そして代襲相続できるのは「直系卑属だけ」という注意点があります。
上記の図で説明すると、もし既に死亡した長男が養子であった場合です。
養子縁組が行われる前に生まれた子ども(夫から見れば孫)は代襲相続はできません。
そしてもう一つ注意すべきことがあります。
それは「同時死亡の推定」という概念です。
例えば上記の図で長男が生きていたとします。
亡くなった夫と長男が同じ車に乗っていて交通事故で二人とも亡くなったケースのお話です。
もしかしたら、数秒から数分は長男の方が長く生きていたかもしれません。
それでもどちらが先に亡くなったか判断が難しい場合は同時に亡くなったものとみなします。これを「同時死亡の推定」といいます。
その場合も夫と長男には相続の関係性が存在せず、長男の子ども(夫から見ると孫)が代襲相続をすることができます。
2−7:相続人なのに遺産相続ができない場合がある。欠格と廃除。
普通に生活している場合には問題ありませんが、例えば子が親を殺してしまった「殺人」は「欠格」となり、遺産相続ができません。ちなみに殺人未遂であっても欠格となります。
他にも「遺言に干渉」した場合も欠格となります。遺言に干渉するとは詐欺や脅迫で相続する人に都合の良いように遺言を書かせたり、偽造、破棄、隠匿などが該当します。
廃除とは、①死亡した人が生前に相続する人から酷い虐待や侮辱を受けていた場合や②死亡した人が被害を被るほどの非行を相続する人が行っていた場合に家庭裁判所の審査を受けてその相続人の相続権を剥奪するものです。
ご参考まで。
3:相続の基本は遺産協議分割。その目安となる法定相続分の説明
3−1:配偶者と子どもだけの場合
子供だけの場合は簡単です。
配偶者が1/2。
子どもが残りの1/2を兄弟で分け分けします。
前述しましたが、「死亡した人の子ども」は第1順位なので子どもが相続したら第2順位の「死亡した人の親」と第3順位の「死亡した人の兄弟姉妹」には相続権は発生しません。
余談ですが、大切なことなので何度も言います。遺言があれば話は別です!
「遺言」は死んだ人の最後の意思表示なのでとても強い力を持ちます!!法定相続分はあくまでも目安です。
3−2:夫婦に子どもがいない場合。配偶者と親が相続
死亡した人に子どもがいない場合は第2順位の「死亡した人の親」にも相続権が発生します。
クドいようですが、配偶者は常に相続人になります。
第2順位の「死亡した人の親」に相続権が発生する場合、配偶者2/3。「死亡した人の親」は1/3になります。(もし死亡した人の「両親」が生きていれば父1/6、母1/6です)
3−3:夫婦に子どもがおらず、両親も既に他界している場合。兄弟が相続
死亡した人に子どもも両親もいない場合は、第3順位の兄弟にも相続権が発生します。
この場合、配偶者3/4。兄弟が残りの1/4を分け分けすることになります。
4:故人の愛人や特定の相続人への全額相続を阻止せよ!遺留分のわかりやすい説明
ひとことで言うと「遺留分は、たとえ遺言があったとしても、法律で保証されている最低限の相続分」です。
結論から言うと法定相続分の1/2が保証されています。
そしてもう一つ結論を言うと、死んだ人の兄弟姉妹(第3順位)には遺留分はありませんので注意が必要です。
私が学校で相続税の勉強をした時は「仮に故人に愛人がいたとしましょう」と先生が「愛人」を例に説明していましたが、実際は特定の相続人に極端に片寄った相続をさせる遺言が多いです。
正直「愛人に相続させる」といった内容は見たことがありません。(実際にはそういう話もあるとは思いますが、、。)
しかし本来は法定相続人ではない「長男の嫁」や「次男の嫁」にも相続させたいという話は何度かありました。
お嫁さんだけでなく、兄弟姉妹間でも特定の人にだけ極端に片寄った相続をさせる遺言は時々あります。
遺言なので自由に作成して良いのですが、問題は残された相続人です。
死亡した人に何人かの子どもがいたとして、もし「次女に全財産を相続する」と極端に片寄った額が遺言に書かれてあった場合、次女以外の兄弟姉妹はガク然としてしまいます。
そうならないように遺留分とは「遺言で仲間外れにされた相続人にも、かわいそうなので欠格や廃除がない限り、本来の法定相続分の1/2を保証しましょう」というものです。